02-01 ほぼあってるけど、なんかいや

 (いろ)(どり)中学校に通う中2の女子、瀬々(せせ)(ら)(ぎ)るりかは、下校途中に「猫っぽいぬいぐるみ」に突然しゃべりかけられた。

「は、はなしをきいてほしいカラ…」

 ぬいぐるみの背丈は3040センチほどで、絵の具のフタを大きくしたような帽子をかぶっていてメス風だ。その二足歩行の猫的なぬいぐるみは、電柱の陰から恐る恐る、るりかにそう話しかけたのであった。

 ―ぬ、ぬいぐるみがしゃべってる!? 話を聞いてといっている!?

 瀬々(せせ)(ら)(ぎ)るりかの身長は150センチ。長いポニーテールを垂らし、活発で肌の血色も良い。

 (いろ)(どり)中の夏服は半袖のワイシャツに小豆色のネクタイの着用が義務付けられていた。

 暑い夏に首回りにネクタイをするなんてクールビズが叫ばれている近年の方向性と逆行しているともっぱら不評であった。スカートは赤いプリーツスカートでよく近くでみるとうすくギンガムチェックになっている。そんな出で立ちの彼女の口元がニヤリと緩んだ。

「これって展開的に、あたし『選ばれし戦士』系でしょ!? そして今、『世界がピンチ』系!?

 るりかは、ツバを飛ばす勢いでそう叫ぶと、猫的なソレに近づくや否や、抱え上げた。

 そして遠い目でブツブツと何かをつぶやき始める。

「すみれ…チカラをもらったのは、あたしのほう。夢なんて、そこまで強く思ってなかった。でも、あたしも試したくなったのよ。人の心を震わせるってやつ。いいじゃない、大いなる敵を前に、正義の味方を演じきって見せるわ! そして、かならず、すみれ、あなたに追いつくわ!」

 なんて、ひとりで誰かに何かを誓った。

「ちょ…、ちゃんと話を…」

 なんだか頭上で締め上げられている感じになってしまっている、猫的なソレは、目の前の少女が一方的に暴走し、少し恐怖のようなものを感じてきた。

「さぁ! ネコ絵の具! 変身アイテムを出して! 変身アイテムは携帯電話型? ジュエル? カード? まさかのベルト型? …なに? 不安そうな顔をして…大丈夫よ、あたし腹決まってるから! 世界を救うために戦うわ!」

 ――ほ…ほぼあってるけど、なんかいやー!!

 心の中で、メス猫型ぬいぐるみは叫んだ。

 彼女()が、電柱の陰から出てきて、思い切って対象の少女にしようと思った話は、一言も告げることもなく、対象の少女にそれなりに伝わってしまったあげくに、誰よりも高いモチベーションと、伏線エピソードを臭わすような完璧な「闘う理由」を添えて、開始わずか3分以内にいろいろ話がまとまった。 

 むしろ、使者がどん引きすると言う、効かせすぎのスパイスをもって。

 変身(もしくは魔法)少女、ガールズ戦士関連作品史上初の出来事は、結構気持ち悪い感じになった。

 そう、この物語は変身(もしくは魔法)少女・ガールズ戦士関連であり、世界がピンチ系な物語である。